悔しい、苦しい。 そんな感情に押し潰されて、涙が止まらない。 溢れる涙を拭う私の手。 その手を、弘樹の大きな手が―… 「…野球オタク?」 そんなことを言いながら、強く掴んだ。 「…ひ、ろき?」 「あれは……」 歪む弘樹の表情。 喉の奥に詰まったように、次の言葉が出ない。 「野球は…」 途切れ途切れになりながらも、弘樹は言葉を続ける。 「―…結莉が…野球がかっこいいって言ったからだ!」 .