「謎が解けたって、答えが分かったのか?」


『答えは何なの!?』


二人の声がまたもやほぼ同時に降り注いできた。


なんだかわざとなのかと疑いたくなる。

まぁ、そんなことあるわけ無いんだけども。


私は一度、咳払いをして口を開いた。


「歌の始まり、ハサミの中心、会議の終わり。これはこのまんまの意味を考えれば良いの」


「このまんまって、歌はイントロってことか?」


「違う違う。本当にそのままの意味で考えるの。会議の終わりは、会議の最後の文字を意味してて、歌の始まりは、歌の最初の文字を意味してるの。つまり、歌の始まりはうたの最初の"う"。ハサミの中心は、はさみの真ん中の"さ"。会議の終わりは、かいぎの最後のぎ。これらをつなげると、うさぎ。つまり正解はうさぎってこと!」


私は指を立てて説明し終えた。

一気に言ったからか、息が少し乱れる。


『なるほどね』


「でもこの部屋にうさぎって…。あっ、もしかしてアレか?」


廉が部屋の隅っこにあるカラフルな大きなウサギのぬいぐるみを指した。


雑貨屋さんとかでよく見る、ちょっと薄めの縦に長いタイプのぬいぐるみだ。


「うん、多分そうだと思うけど…」


部屋の中を見回しても他にウサギのものは無い。


「でもウサギのぬいぐるみにカギが隠れてるのか…?」


廉がぶつぶつと言いながらも、奥からかわいらしいぬいぐるみを持ってきた。


なんか、廉とぬいぐるみの組み合わせってレアかも。


「…て、でかっ!」


近くで見ると、ぬいぐるみは百センチはありそうな大きさだった。


これって、抱いて寝るのかな…。


そう思って試しに抱いてみる。


「あっ、意外とふわふわで抱き心地もいい…」


かわいいし、抱いて寝るのにはちょうどよさそう…。


と、その時、なにか固いものに触れた感触がした。


「どうした?」


「いや、何か固いものにぶつかった気がして」


「固いもの…?もしかしてそのぬいぐるみの中にカギが入ってるんじゃないか?」


ピンときたといった顔で廉が話す。


確かに思えばあの感触はカギだったような気がするけども…。


「…まさか、ぬいぐるみを切るつもり?」


「しょうがないだろ。脱出するためなんだから」


「でも、なんかかわいそうだよ!それに、どうやって入れたって言うの?」


「とにかく、切ってみないことにはさ」


そんな風に言い合っていると、頭に声が降り注いだ。


『ねえ、そのぬいぐるみって最近流行ってるカラフルうさぎ?』


『え?そうだけど』


そういえばそんな名前だった気がする。


『なら、しっぽの部分にチャックが付いてるはずよ。そこに小さな宝物を入れるのが流行ってるみたいだから』


そう言われてしっぽのところを見ると確かに小さなチャックが付いてた。


そしてそれを開けると


「…あっ、」


小さな赤いカギが入っていた。さっき見つけた青いカギとよく似てる。


って、ことは。


「これが二つ目のカギだな!」


「うん、そうみたい!」


私たちは喜びで思わずハイタッチをする。


重なった手と手が爽快な音を鳴らした。


『これで一歩前進ね』


『うん。でも瀬那、よく知ってたね。カラフルうさぎにチャックが付いてるって』


もしかして、実は瀬那ってああいうぬいぐるみが好きだったりして。


『調べたのよ。…ていうか、ふつう気づくでしょ。結構見える位置にあるし』


『えへへへ』


「もしかしてチャックのことお前の妹が知らせてくれたのか?」


瀬那との世界にいると、急に外側から声がかかったので一瞬びっくりする。


「あ、うん。瀬那が気づいたみたい」


「そっか。ありがとって言っといてくれ」


廉がそう言って晴れやかな笑顔を浮かべた。


「うん、わかった」


その瞬間、どうしてか胸の奥がちくりと傷んだ気がした。