「…はあ」


あからさまに落ち込んでいるかのように廉が大きなため息をつく。


ドアのカギはやっぱり閉まっていて、どうやら二つのカギがないと開かないようだった。


…にしても、そんなに落ち込む?


そう思いながらも、一応励ますために声を掛ける。


「大丈夫だって。またなにかこのドアを開けるヒントが隠れてるよ」


そう言うと、廉はジトっとした目で口を開いた。


「…お前、ここから飛び降れないのかよ」


「そんなの無理に決まってるじゃない!」


一応、吹き抜けの構造になってるから飛び降りること自体は出来るけど、見た限り下まで五メートルはあるここから飛び降りなんてしたら命の保証はない。


爆発で死ぬのも嫌だけど、これはもっと嫌!


「ね、この先には何があるの?」


「このドアの先がレストラン。さらにその先には演劇やマジックなどが行われる舞台がある」


そういえば、どっちも飯田さんに案内してもらったっけ。


「あっ、ていうかお前、サイコメトリーでなんか分かんないのかよ。カギの場所とか」


「あっ、そうか」


忘れかけてたサイコメトリーを思い出した。


サイコメトリーは場所とか、物に残された人の思いや感情、イメージを読み取ることのできる能力だからもしかしたら何かが分かるかもしれない。


イメージが残されてると良いけど…。


私は目を閉じ、ゆっくりとドアのカギ穴に触れる。


その瞬間、脳に電流が走るように鮮烈なイメージが飛び込んで来た。


これって…。


「何か分かったのか?」


目を開けて、カギ穴から手を離す。


「うん…。多分、映画館…かな」


読み取れたイメージは、大きなスクリーンとその正面に高級感のある赤い座席がいくつも並ぶ大きな部屋だった。


でも、さすがに映画館なんてあるはずないよね。だって、船の上だもん。


「映画館ならそこの扉から行けるな」


「えっ、うそ!」


平然と横にある、両開きタイプの扉を指差す廉にびっくりする。


この船の中に映画館!?

本当に豪華すぎる…。


何度目かのため息をついて息を整える。


ていうか、映画館の扉、ちょっとだけ開いてるような…。


よく見ると、扉の片方が少し開けられていて隙間ができていた。


隙間からはなんというか、映画館独特の雰囲気が漂っている。


ということは、やっぱり映画館に何かがあるってことだよね!


「じゃ、そこに早く行こっ。多分あそこになんかあるよ。扉も開いてるし」


「…そうだな。行くか」


ちょっと元気になった廉と共に私は扉へと向かった。