『…え』




頭に呆然とする瀬那の声が響いた。


さすがの瀬那も驚くよね。


まさか、船が動き出すなんて…。


私はスイートルームの窓越しに離れていく港を見てそう思う。


数分前、出発の合図をして早速エレベーターに向かうと、いきなり船が大きく揺れた。


一体何事かと、窓のあるスイートルームまで戻ってみると、港がどんどん離れていたのだった。


「もしかしたら捜査の手が及ぶのを見越して海へと出たのかもな。海に出たほうが俺たちの脱出ルートもなくなるし、爆発が起こっても周りへの影響は少ない」


離れていく港を見ながら、隣に立つ廉が冷静に言う。


良く落ち着いていられるよね…。


もしかしたら、こういうこと経験してたりして。


三崎グループ社長の息子だもん。


ありそうだよね。


「…誘拐なんてそうそうされた事ねぇよ」


私の心を読み取った廉がポツリとそう言った。


「デスヨネー」


海を見ながら、そんな事を言うと頭の中に声が響いた。


『ねぇ、七瀬』


『あっ、瀬那。どうしたの?』


『私は犯人のことについて、事件について調べるから七瀬はとりあえず』


『あっ、そうだ!瀬那に言ってなかったことが…』


私はふと、犯人の仮面のことや、廉のことを思い出した。


一応瀬那にも話したほうが良いよね。