「…はぁ」


さっきと同じくため息をつきながら、ノートパソコンを閉じる。


「結局分かったことは、犯人は少なくとも男女5人いたこと。そして、犯人たちはスイートルームのある十一階には絶対に近づかずに船内から全員出ることを要求したこと。犯人たちは一人を除き全員顔をさらしている。…で、その一人は真っ白で不気味に笑った仮面をつけてた」


どれも大した情報ではないけど、やっぱり一番気になるのは犯人の仮面…。


なんで仮面なんかしているのか。


顔が世間に公表されるのを避けるため?


話題性を出すため?


それとも、顔を知られているため…?


考えても考えても答えは出てこない。この状況じゃまだまだ情報も足りない。


さて、どうしようか…。


と、その時頭に聞きなれた七瀬の声が響いた。


『瀬那、どうしよう!船が動いてる!』


『…は?』


瞬間、七瀬が何を言っているのか全然わからなかった。


船が…動いてる?


その言葉を信じられなくて、無造作にテレビのチャンネルを押す。


「こちら、現場です!たった今、三崎グループの豪華客船が犯人グループによって動き出しました!犯人グループの意図は未だ分かっておらず…」


早口で焦る女性キャスターの声と共に、港の様子が映し出される。


「…え」


そこには港から離れて、ゆっくりとまるで優雅な旅へと向かうように広大すぎる海へ向かう豪華客船の姿があった。