「行ったか…」
クリリンはそう呟いたあと、私の口を押さえていた手を退けた。
私は酸欠状態で、ゼーゼー言っている。
心臓も有り得ないくらいドクドクしている。
ようやく息も整い始めてきた頃、顔をあげるとクリリンと目があった。
「………」
「………」
お互い無言で、見つめ合う。
クリリンの茶色い瞳の中に、私が映っている…。
その瞳に吸い込まれてしまいそうになる…。
私は色々と言いたいことがあったのに、クリリンの瞳を見ていると、うまく言葉にできない。
クリリンも何も言わず、私をジッと見つめてくる。
なんでクリリンは何も言わないの?
なんで私は何も言えないの?
私達だけ、時が止まったみたい…。
うるさく響く、この心臓以外は──…。


