そっぽを向いたクリリンの瞳から戸惑いの色が見えた。
目が泳いでる?
あのクリリンが珍しいな…。
「…だから、新妻の演技とか、そういう接客を他の奴にもしているのか?」
「新妻の演技?
まあ、新妻喫茶だし、私ウエイトレスだからね~。
それが私の仕事なんだって」
「………」
クリリンは顔に手をあて、何かを考え込んでいるように身動きをしない。
「…あのクリリン?
私そろそろ戻っていい?」
香織が怒っていると思うし…。
「……戻るな…」
クリリンがようやく、顔をあげた。
「え?」
「お前は教室に戻るな…」
「なんで!?
戻らないと皆困ると思うし」
香織は怒ると思うし。
クリリンは何を言い出すの!?
やっぱりこの人、亭主関白や!!
「やっぱり戻らないとマズイよ!
あ、ほら。チャーリーが捜しに来たみたい」
こちらのほうに向かって歩いてくるチャーリーの姿が人ごみの中から見えた。
でも私達がいる廊下の端は、電気がついてなくて薄暗いから、私達に気づいてないみたい。
「おーい!チャー…ンッ」
チャーリーを呼ぼうとした私の声は、途中で途切れた。
私の口を覆ったクリリンの手によって…。


