「進路相談が、恋愛相談かい…。
…いいか。キスっていうのはな、する場所によって意味が違ってくる場合がある」


ふむふむ。

私は頷いた。


「例えばだな~…、手の甲だったら敬愛。
 ホッペだったら、外国では挨拶として交わされる」


タモちゃんは手に持っているペンを、器用にクルクル回しながら言った。


「…じ、じゃあ、唇は?」


私が恐る恐る聞くと、タモちゃんはニヤリと笑った。


「そんなの、相手が好きって意味じゃろ」


相手が好き!?


ってことは、チャーリーは私のことを好きってことーー!?



「ヘー、吉本が恋愛について悩んでいるとはねぇ。
 で?誰かにキスされたのか?」


からかうように、ニヤニヤ笑っているタモちゃん。


「ん?先生に教えてみろよ」



顔がカァと熱くなる。


「………っ!!
タモちゃんの馬鹿ーー!
そんなこと聞くなんてセクハラよー!」


私はポケットの中から修学旅行で買った”マキビシ”を掴み取り、タモちゃんの足元に投げつけ、進路指導室から飛び出した。



「おい!なんだコレ!?イテッ!
セクハラって、お前が言い出したんだろうがー!
って、まだ進路について話しあってないし!
コラー!戻ってこい吉本ーー!」