特殊捜査チームの部屋に戻ると、先程まであった落ち着いて楽しげな空気から真剣なものに一瞬にして変わっていた。ホワイトボードには三人の女性の写真が貼ってあり、サルビアが事件の資料を配っている。フィオナがデスクの席に座ったところで、シオンが口を開いた。

「これから捜査をするのは、この三人の女性の誘拐事件についてだ。捜査一課が協力要請をしてきた」

三人の女性が同じ日に別々の場所で誘拐された。誘拐された三人は知り合いなどではない。しかし身代金の要求などはなく、誘拐現場を目撃した人たちの証言により、この三人が大きな組織によって誘拐された線が濃いため、三人を同時に探すことになったそうだ。

「身代金の要求をしないって、それなら何のために誘拐をしたの?普通、お金がほしいから誘拐するんじゃないですか?」

エヴァンがそう言うと、シオンとサルビアは顔を見合わせて難しそうな顔をする。すると、フリージアが口を開いた。

「誘拐をして身代金を家族に要求するのはリスクが大きい。警察に逆探知されているだろうし、捕まる可能性の方が高い。だから組織的な犯行の場合、身代金の要求はしないんだ。代わりに大金が手に入る方法があるからな」