フリージアの表情に、フィオナは胸が騒ついた。フリージアはこの部屋を出て行った。でも、トイレは部屋の中にある。ならどこに行ったのか。屋上だろう。このビルには屋上がある。

もしかして飛び降りてしまんじゃ、と嫌な予感がしてフィオナは立ち上がって屋上へと向かった。

階段を駆け上がり、重い扉を開ける。フィオナの瞳に青く美しい空が見えた。そしてその下で、フリージアが屋上の柵に手をかけて街を見ている。その横顔はとても悲しそうな目をしていて、フィオナは声をかけていた。

「フリージアさん、こんなところで何をしているんですか?」

フリージアはいつも、フィオナと同じように無表情のはずだった。それなのに、フリージアの瞳は今悲しみで揺れている。それを見過ごすことがフィオナにはできなかったのだ。

「何もしていない。ただ、風に当たりに来ただけだ」

フィオナが声をかけると、フリージアは一瞬驚いた様子を見せたものの、その表情は一瞬ではがれ落ちていく。フリージアはいつもの無表情に戻っていた。