リトルソング-最強総長は歌姫を独占したい-

「はぁ?」と呆れるようなみんなの声が聞こえた。

見事に6人全員がハモってるけど、そんなことに感動していられない。

お父さんが総長!?雷神の元総長!!?


「総長だったんですか!?」

「ああ、俺は総長だ……ん?」

「へっ……」


違うよ睦斗くんや。

私が聞きたかったのは君の話じゃなくて。

……ん?


「俺が総長だってことはお前も知ってんだろ?」


待てよ、今睦斗と話が噛み合ってない。

これは、ヤッチまったタイプだ。

全然話聞いてなかった!


「あ……そうですよね、いやそうじゃなくて」


わけの分からないことを並べ大人しく着席。

ヤバイ。お父さんが総長だとかなんとかかんとかから、まっったく聞いてなかった!

いきなり叫んだ上に話聞いてないとか、これは重罪に値する大問題だ!

お、思い出せ。耳には一応入ってたんだから思い出せる!


「……要するに、お前の親父さんにはこの街の奴ら全員が感謝してるってわけだ」

「な、なるほど……」


まあ、仕方ない。

お父さんは暴走族であるがヒーローだったということで認識しておこう。


「それに俺は……お前のことをずっと探してた」


信じられない言葉に顔を上げると、ばっちり眼が合う。

いつ見ても綺麗な目だ。

本当はずっと見ていたい、ずっとその声を聞きたい、傍にいたい。

そう思えるほど、この人は人を惹きつける力を持ってる。


「お前は……3代目と、あの人の……」


いつになく優しい瞳は私に向けられてた。

でもダメだ。勘違いなんかしちゃダメだ。

私に優しくしないで。

優しさは私の何かを呼び起こす。

それを呼び起こしてしまったら私はきっと──



コワレテしまうから。