その日は、一日中雨だった。

降り続いた雨は運動場に大きな水たまりを作って、まるで海みたいだ。


「優凛、ちょっとええか」


突然の呼びかけは私の思考を止めた。

声のした方を見ると、ハニ―ブラウンの髪が目に入ってきた。


「……龍生?」

「ついて来て欲しいんや。ええか?」


何も考えずうん、とうなずいて立ち上がる。

なんでだろう?

立ち上がるという動作をおっくうに感じるなんて。

雨の日だから?

空が暗いから?



でももっと何か、何か大事なことがある気がするのはどうして?