リトルソング-最強総長は歌姫を独占したい-

side 睦斗


空気が変わった。

目の前の女──安西優凛が歌い出した途端、確かにそれを感じた。

不思議だ。その声が耳から離れねえ。

綺麗なんて言葉じゃ足りないくらい、透き通って体に浸透する声。

それだけじゃない。聞く気はなくとも絶対に惹かれてしまうような、そんな歌声。


心の底から歌うのが好きだって顔しながら歌ってる姿に惹かれる。

これまで生きてる中で、2度目の出来事だった。

人の歌を聴いて感激して、心が、体が震えたのは。

この感覚はきっとそうだ。こいつはあの人の───“あの人”の?


ああ、やっぱりそうか。合点がいった。

「安西」という名前、あの人と同じギター。


……やっと会えた、俺はお前をずっと探してた。


会ったからには、なにがなんでも離したくない。

と思っていたら俺はあいつのギターを奪ってしまっていた。

そうでもしないと、あいつは手の届かないところに逃げてしまう気がした。

母親と同じように、触れることもできない遠くへ……。


おかしい。なぜここまで執着する必要がある?

「守りたい」という感情だけでこんなにも執着するものなのか?

分からないからただ今は、誰よりも近くで聞いて、誰よりも近くで見ていたい。