リトルソング-最強総長は歌姫を独占したい-

「悠、言い過ぎだって」


私の異変に気づいたのか、オウタさんが声をかける。


「おい、ここから消えろ。
今ならお前の代わりに、ギターをぶっ壊す程度で許してやる──」


けれど本人は気づいていなくて、容赦ない言葉を口走る。

その瞬間私の中で何かがプチッと切れた。


──バキッ!


振りかぶって思い切り顔面を殴る。

ごめんね。

でも、お願いだからそれ以上言わないで。

私が“壊れる”から、それ以上は言わないで。




「ゆ……優凛ちゃん!?」


オウタさんの驚いた声がこだまする。

私はその場からピクリとも動かなかった。


「……ってえ…」


赤髪は殴った拍子に右に傾いた顔をゆっくり戻して、怒りを孕んだ含み声で私を睨んだ。


「……何すんだ、てめえ」

「誰かが、言ってたよ」


怖いけど、心が痛いけど伝えなくちゃならない。

だから彼が行動に移す前に先手を取った。


「物には人の魂が宿るの。あのギターには、確かにそれが感じられる」


この後何をされたって構わない。

殴られたって、罵られたっていいから、“否定を否定”しなきゃ。


「私のことはいくら馬鹿にしても、けなしてもそれでいいよ。
だけど、何があってもギターだけは……あのギターだけは、バカにしないで。否定しないで」


ギターをバカにされたということは、お母さんを否定されたのと一緒。

お母さんを否定されたってことは、私の家族を傷つけたのと一緒。


「私の大切な人をあざ笑うのだけは許さない」


お母さんが存在していたことを忘れたくないから、あのギターだけは無くしたくない。

ぬくもりを感じられる、たったひとつの宝物。