それが雷神の月島那智。


以来、ココは月島那智のことを好きになったというのだ。

外見じゃなくてその優しい心に。

“雷神”じゃなくて“月島那智”が。

……しかし、信じられん。

私が会った時の那智の印象と言えば、「おっかなくて近寄りがたい」だった。

第一、女の子をひと睨みで泣かせちゃった人だからね。

でもココの思い出の中の月島那智は、ジェントルメンすぎて惚れるしかないじゃないか!

女の子の窮地を救った上に安全なところまでエスコートなんてそんな優男が雷神にいるの!?

そうして雷神に興味が湧いた私が向かった先は──


「ど…どうしよ」


そこは屋上へと続く階段の上。

ここを開ければ雷神のメンバーが待ち構えてるはず!


「はぁ、はぁ……お、落ち着け。落ち着くんだ私!」


独り言でなんとか自分を鎮めてみようと思ったけど、むしろ動悸が激しくなってパニック寸前。

ダメだ!ほんとに落ち着こう。

ギターを返してもらうだけでしょ?

何にも悪いことしてないし、雷神はみんないい人らしいから恐れることはない。



「そうだ。ギター返してもらえればそれでいいんだ!」


自分を納得させてドアノブを掴む。

今日こそ雷神との関係を断ち切るぞ!