「好きって…誰が?」


でも、見た目で人は判断しちゃいけないと教わったので、ココの話を聞いてみることにした。

するととっても恥ずかしそうに小さな声で言った。


「月島くん……」

「ツキシマくん?」


誰だそれ。

てか、名前聞く以前に雷神の人たちの名字覚えてなかったわ。

……ごめんよココ。

一生懸命好きな人の名前教えてくれたのはいいんだけど、誰だか全然分かんない。

でもココは『言っちゃったー!』みたいな感じで恥ずかしそうに下を向いてる。

申し訳ない、申し訳ないんだけど。


「ツキシマくんって誰?」


イチから教えてくれませんかね?


「………え?」


長い長い沈黙の末にそれだけ口にしたココ。

分かってます。そういう反応をされるのは重々承知しております。


「実は私さ……あんまりその雷神?ってやつに詳しくなくて……」


ハハッと苦笑いを浮かべながらココの反応をうかがう。


「ホントに知らないの?」

「う、うむ……」

「なんだ、よかった。
優凛がすごい深刻な顔するから怒られるのかと思った」


怒る?なんで怒らなきゃいけないの?


「他の人にこんなこと言ったら本気で雷神に恋してるの?って怒られるかバカにされちゃうんだよね……」

「なんで?」

「だって、雷神はホントに雲の上の存在だから。みんなの憧れだもん」

「憧れ!?あんな怖い人たちが?」

「こ、怖いだけじゃないんだよ!本当は優しい人ばかりだから」


びっくりし過ぎてツッコんだら、ココもびっくりしたように言葉を返してきた。

優しい?人のギターを奪ったりと、傍若無人なあの総長が?

私のこと罵りまくるあの赤髪が?

まあ紳士とかは優しそうだけど、信じられん。