「はあっ、はあ……とにかく音楽室に……うん?」


逃げ出してここなら安全だと辺りを見回した時、視界の隅に何かが映る。

はっとして見ると、そこにはふわっふわの内巻きボブの女の子が。

あれ?この子見覚えがあるぞ。


「……新田さん、ちょっと待って!」

「え……?」


ラッキーだ。彼女も確か選択科目が音楽だったから、音楽室教えてもらおーっと。


「お恥ずかしながら音楽室へたどり着けなくて、私も一緒に行ってもいい?」

「あ、あの……実は、私も音楽室が分かんなくて……ご、ごめんね」


すると、なぜか謝る新田さん。

眉毛ハの字にして、怯えていた。

……私ってそんな怖い顔してる?


「いいよ全然!新田さんも迷子か、なんだよかったー。
じゃあ2人で探しに行こっか。2人なら遅れても怖くないね」


でもいたずらっぽく笑ってみせると、新田さんもつられて笑ってくれた。

この子、笑顔も天使みたいで可愛いぃ!

こんな穏やかで可愛い子と仲良くなれたらいいのになぁ。

そう思いながら2人で歩きだした。


「ねえねえ、名前、なんていうの?名簿表見たんだけど、漢字が読めなくって…」

「私?私は新田心菜(ここな)って言うの」

「ココナ?名前までかわいい!漢字で書くの?なんて呼ばれてる?」

「え、えっと……」


テンション上がって『何時何分何秒?地球が何回まわったとき?』的なノリで問いかけた。

あらら、美少女を目の前にネジが外れてきちゃったわ。

当然その様子にびっくりしてたココナちゃんだったけど、素直に答えてくれた。