それから数時間後。

雷神の人に会わなくてはいけない事に、不安を募らせながら迎えた4限の授業。


「ちょっと早めに行こう」


4限は音楽。

移動教室だから早く行かなきゃと廊下に出た。

のんびり歩いて、音楽室へと続く1階の渡り廊下に通過しようとしたところで異変に気づく。

女の子の、アイドルに向けるような黄色い声が廊下に響いた。


「あ!ねえアレ、桜汰先輩じゃない!?」


すると後ろにいた、2人組の女の子がすぐ横を通りすぎていく。

あの子たちオウタ先輩って言ったかい?

そんな珍しい名前の人、1人しか知らないんだけど。


「……あ!」


嫌な予感がしてそっちを見たら、中心にいる背の高い男子と目が合ってしまった。

明るいベージュの髪色のイケメン。


「優凛ちゃん見っけ、こっちおいでよ」

「ウゲッ!」


間違いない、雷神のオウタさんだ!

今一番出会いたくない雷神がなぜここに!

オウタさんが話しかけて来たのをきっかけに、周りにいた10人ほどの取り巻きの女の子が一斉に振り返ってきた。

そろって“誰だよこいつオーラ”を出しまくる。

怖っ!女子の集団圧力怖っ!

うん、これ以上この場にいたらヤバいな。

さすがの私でも感知し、すぐに進行方向を逆にした。


「…あんなのが桜汰先輩に名前覚えてもらってんの?」

「あのスリッパ1年よね?身の程わきまえろよ」


さっきの2人組らしき低い声が私の耳に届いた。

が、聞こえてなフリをしてで私は走って祈った。

お願いだから、私に普通の女子高生ライフをくださーい!