わあぁ、と司会担当のアナウンサーの声に反応する会場。

ところどころで名前を叫ばれえ「頑張れー!」なんて応援の声も聞こえてくる。

熱気に包まれ、感極まって緊張が高まる。


「中高生を中心に絶大な人気を誇るYu-riさん。
今回は彼女の人気を裏付けることとなった、あの名曲を歌っていただきます」


私は1年半前、高校卒業と共に『Yu-ri』という名で歌手としてデビューした。

もちろん事務所はレオンのいるところ、清水プロダクションに所属している。


「新曲オリコンチャートでは常にトップ5入りをするYu-riさん。
その始まりとなったこの曲には、Yu-riさん自身も思い入れがあるそうです」


たくさん努力して、数えきれない苦難も乗り越えてきた。

だから私はここにいる。

みんなの前で、人のために歌うことができる。


「人とのつながり、愛する人の大切さを歌う歌詞には、共感できるとたくさんの人が支持しています」


今から歌う曲はそう、16歳のあの頃に作った曲。

あの人と――睦斗と出会えたから完成した曲。


「みなさんにもそれを知ってほしい……だから彼女は歌い続けます。
それでは歌っていただきましょう。Yu-riさんです!」