「優凛、弟殺す気か」

「え?ぎぃああ!ごめん達綺!!」


違った!震えてるのは酸欠の影響だったのか!

あわてて解放すると、ぜえぜえ言いながら達綺は睦斗を見た。


「げほっ……助け船出すの遅いっすよ……」

「悪い、優凛が馬鹿力なのを忘れてた」


うむ、すまぬ達綺。

お姉ちゃん嬉しかったんだよ。

達綺はガンじゃなかったこと。

まだまだ一緒にいられるってこと。

ずっと悩んでいたけれど、心配だったそれも杞憂だったことに安心。


ところで、達綺を苦しませた正体。

それは『骨軟骨種(こつなんこつしゅ)』と呼ばれる良性の腫瘍だった。

骨に沿ってツノみたいな腫瘍ができて、それが原因で痛みが発生したらしい。


「手術する予定だけど、バスケはこれまで通りできるから大丈夫だって」

「ホント?よかったー……」


そしてお母さんはガンを患っていたから、医師はその可能性を疑った。

ガンは遺伝性が高い。

加えて骨肉腫は10代の頃が最も発病しやすい。

だから達綺も余計深刻に考えてしまったみたい。


「手術はいつ?」

「1ヶ月後。その時は父さんも休み取って来てくれるって」

「そっか、じゃあ手術が終わったら一緒にお母さんのお墓参りに行こう。
全部終わってからの方が達綺も気楽でしょ?」

「うん、そうだね」