リトルソング-最強総長は歌姫を独占したい-

プイッと顔をそらした時だった。

睦斗が私の腕を引く。


「……おいで?」


柔らかな睦斗の表情に不覚にもドキッとしたけれど。


「私は犬じゃない……」


さっきから気になってたんだ。

おいでおいでの連発。

まるで子犬や赤ちゃんを呼び寄せるような招き方。

失礼だが私はレディだ。


「……ふふっ、相変わらずだな優凛」


すると睦斗は優しい表情を崩して笑った。


「ん?バカにしてる!?」

「いいからこっち来い」


ぷんぷん怒ってると、睦斗は振り返って手を差しのべる。

うう……なんだか全部睦斗のペースだ。

ここで手をつないだら負けな気がする。

と、いうわけで。


「ダァーッシュ!!」

「……はあ?」


猛烈な勢いで睦斗を素通りした。


「灯台まで競争だ睦斗ー!」

「アホか、ケガに響くぞ」


ええ、我ながら突拍子のない行動をとったと思いますよ。

でもこれが私。

記憶を思い出しても感情を取り戻しても、私は私なんだって、ちゃんと見てほしかった。


「ほら、早く睦斗!」


思い出の灯台まであと少し。

折角だからまた上ってみたいと思った。

私にとって大切な人と一緒に。


「睦斗ー!」


その優しくて強い瞳は私に向けられている。

誰もいない海岸に私たちだけの空間。


この時を、この一瞬を胸に刻んでおこう。

きっと一生忘れることはないだろうから。