走りながらポケットに入れていたスマホを手に取り、電話をかける。

嫌な予感がする、この期を逃したら私はまた全ての記憶を失ってしまう気がした。

だから最後に……あの人の声が聞きたい。


『……優凛、優凛なのか！？』


しばらくして電話に応じたのは睦斗。

かなり焦った声が聞こえて、すごく申し訳ない気持ちになった。


「ごめん睦斗、心配かけて」

『どこにいる？今すぐそっちに行くから』


その時、私を追いかけていた男たちの怒号が聞こえた。


『……追われてるのか！？』

「私、お墓参りしたかっただけなの。
それだけなのに……ほんとついてないね」

『優凛、絶対諦めるな。助けに行くから待ってろ！』


強い口調でそう言ってくれた睦斗。

絶望的な状況の中わずかな希望を見出したその時、鋭い頭痛がしてひとつの記憶を思い出した。