「母親の死を受け入れられなかった故に記憶と感情を失った。それが優凛だ」


ざわり、幹部達の焦りが声となる。

……どれだけつらかっただろうか。

たった独りで大きな闇を抱えこんで、誰にも話せず、家族にすらそれを隠していたなんて。

家族ですら解決出来なかった問題に、俺は立ち向かえるだろうか。

いや、考えている時間すら惜しい。


「龍さん、話してくれてありがとう。
……少し出かけてくる」

「睦斗、どこへ?」

「今から優凛に会いに行く」


今度こそ向き合って支えてやりたい。

あいつの全部を受け止めて、その心の歪みに寄り添ってやりたい。

何年かかってもいい、いつしか心を開いた、本当の優凛の傍にいたい。

ただ一心の想いが、俺を動かした。