リトルソング-最強総長は歌姫を独占したい-

……どれだけ、苦しかったことだろう。

記憶を失った方がマシだと思えるような地獄の中で生きていたなんて。

それを誰にも相談できなかったなんて。


「もし今の時点でそうなれば、お前らのことも忘れちまうだろうな」

「そんな……」

「2年前もそうだった。それ以前の全ての記憶を忘却し、自分を繕った。
つまりお前達が知っている優凛は、本当の優凛ではないのかもしれない」


“歌うことが大好きな天真爛漫な優凛”。

それが作り上げられたものだとしたら、本物の優凛はどこに?


「……人的外傷後ストレス障害(PTSD)って知っているか?」


言葉を失った俺たちを前に、龍さんが質問してきた。


「PT、S……?」

「PTSD。強いストレスを感じ、心に深い傷を負うことで発病する病だ。
優凛はあの日から、母親がいなくなったあの日から、精神を患っていたと思われる」


……知らないことだらけだ。


「しかしそれらを治そうと、カウンセリングによる治療は無意味だった。優凛は完全に自分を偽っていたからな。
無理に記憶を呼び覚まそうとすると、逆に優凛の精神を害する可能性もある。
だから家族ですら、優凛の心の闇に向き合うことができなかった」


俺は優凛を守っているつもりで何もしてやれていなかった。