リトルソング-最強総長は歌姫を独占したい-

あれだけ泣き虫だった姉ちゃんが、その日を境に泣くことをやめた。

代わりにどんな時にも、笑うようになった。

母さんを失った家族にとっては、それはありがたいことだったけど、俺たちは気づかなかったんだ。


感情が抜け落ちてしまっていると。

記憶の一部が改ざんされていると。

そして、そのせいで耐え難いいじめを受けていたこと。


姉ちゃんは、悲しみを感じると笑うようになった。

そのせいで気味が悪いと人が寄り付かなくなった。


昔の記憶をすぐに忘れるようになった。

そのせいでうまく人とコミュニケーションが取れなくなった。

いじめはその頃からエスカレートしていったらしい。

そして悲しみを深く感じると、それ以前の記憶を自分で削除する。

感じてはいけないものだと流してしまう。

もしくは他の感情で無理やり補い、自分らしくあろうとする。


例えば、雷神にギターを奪われたあの日。

姉ちゃんは約6年ぶりに、俺の前で泣いた。

「ギターがなくなった」と、大粒の涙を流して訴えてきた。


俺はその時、姉ちゃんに悲しみの感情が戻ったのでは、と期待した。

でも違ったんだ。

あの涙は、純粋な怒りから来る涙だ。

色んな感情がまぜこぜになって、怒りに変換したことによるものだった。