リトルソング-最強総長は歌姫を独占したい-

その日容体が急変した母さんは、安らかな微笑みを浮かべて、この世を去った。

夕日が綺麗な秋の日に。

父さんの──最愛の人の腕の中で、動かなくなった。


『夢……愛してるよ……』


父さんは泣いていた。

俺も泣きじゃくった。

来てくれたばあちゃんもじいちゃんも、看護師さんだって必死に涙をこらえてた。

でも。


『姉、ちゃん……?』


姉ちゃんだけは、涙を流さなかった。

呆然とその場に立ち尽くして、目だけは虚ろに母さんを映していた。

まばたきもしないで、ずっとずっと。

真っ黒な瞳で、一点だけを見て。




姉ちゃんはその時、ある感情を失った。

誰もにあるはずのそれを、姉ちゃんは母さんの死に直面して、失ってしまったんだ。

俺がそれを知ったのは、あの土砂降りの雨の日。

母さんの葬式の日だった。