それ以上彼が注意を促す様子は無かったけど、2人とも取っ組み合いには進展せず。

なるほど、これが頭の器ってやつなのかな。

すると、総長さんと目が合った。


「名前は?」


即座に尋ねられるけど、おかしいでしょ。

なぜ今の流れで、私の名を知る必要があるの?

全く繋がりないよね。なんじゃコイツは!


「聞いてんのか。名前教えろって言ってんだよオラ」

「……は?」


ホント、わけ分かんない。もうネジ外れそう。

なんで、なんでそっちが急にキレてんだコラァ!

舌巻いてんオラ、じゃないわコラァァ!


「な、なんでそこまでして知りたいんですか!」


イライラの余り、思いの丈をぶちませる。

構わず総長さんは、教えろコラ!って顔で威嚇してくる。


「……言わねえと、そのギターぶち壊すぞ」

「はあ!?なんでですか!器物破損で訴えますよ!」

「うるせえな、俺にそんなチンケな脅しが通用すると思ってんのか」


いやいや!脅してるのはどっちだ!

なんなのこの人、絶対頭おかしい!

名乗らないとギターぶち壊すとか、名前がどんだけ重要なんだよ!

さあ優凛!考えるんだ。

2つの選択肢を天秤に掛けて、どっちが大事か熟慮するんだ。

名前を言えば───地獄決定。

ギター壊されれば…?壊される?唯一の宝物が?

嫌だ、それは絶対嫌だ!こうなれば不本意だが───


「安西優凛です!」


ギター守るしかないでしょ。

さようなら、たおやかなJKライフ。