side 達綺


病室を出ていった姉ちゃん。

俺はその後ろ姿を見て痛烈に後悔した。

なんであんなこと言った?

なんで姉ちゃんを傷つけるようなこと言ったんだよ。


「姉ちゃん……」


あんな顔させないって、俺が決めたのに。

人形みたいなあんな表情、もう一生見たくないって思っていたのに。

青白い頬に何も映していない瞳。

あの日以来見たこともなかったのに。

絶対に同じ過ちを繰り返しちゃいけないの知ってたのに。

全部全部、俺のせいだ。


「ごめん……姉ちゃ、ん……」


頬を伝う熱いものはなんだ。

なんで俺が泣いてんだよ。


「俺、の……せい、だ……」


一番苦しいのは誰だ。姉ちゃんだ。

負の感情を全部背負って、それでも俺たちに光を与え続けてくれたのは誰だ。

姉ちゃんだろうが。


「ごめん、なさい……」


ごめんなさい母さん。

大事なものを傷つけました。

唯一の光を、俺が真っ暗闇に突き落としたんだ。