「あなたはまだ16歳。これからたくさんの経験をする年頃です。
それを私達が、芸能界という檻に閉じ込めて束縛するのは、あまりにも酷でしょう。
……それに感じたんです。あなたが羽ばたくのは今じゃないと」

「今じゃない?」

「はい、あなたの歌声がそれを物語ってします。
あなたの歌声は、信頼している人が傍にいることで輝けるんです。
大事な人といることで、あなたはもっと強くなれる。
誰にも負けない力を得ることができる」


黒川さんは力のこもった目で続けた。


「だから、あなたにとって彼らは……雷神は必要不可欠な存在でしょう。
自らが離れてはいけない、大切なつながり」


……大切なつながり、か。

そうだね、初めて出来た大事なものなんだ。

離れたくないって、心から思ったのが彼らなんだ。


「……これでもう、思い残すことはありません」


微笑んでいた黒川さんは、少し寂しげにうつむいた。


「どちらにしろ、レオンは1週間後にアメリカに渡ることが決まっていました」

「え……1週間後!?」


その言葉にレオンを見ると、ふわりと表情を変えた。


「……んー、そうなんだよね。ユーリちゃんと会えなくなるなんて残念」


爽やかに笑う彼。

けれどほんの少し、切ない笑顔だった。