「ユーリちゃん?」

「はい!?何の話してました?」

「大丈夫、まだ何も言ってないよ」


なら良かった。

また余計なことで大切な話を流してしまうとこだった。

……余計なことじゃない。

誕生日って、私にとっては重要なことだけど。


「今日お呼び出ししたのは、優凛さんのことについてなんですが……」

「私ですか?」


まあいいや、話に集中しよう。


「はい。あなたの歌手デビューについてです」

「え!?」


もうデビューの話とか決まっちゃってるの!?


「とは言っても、それはあなた次第。
ここで確認します。あなたは……歌手になりたいと思いますか?」


歌。それは私にとって生きがいを示す。

喜びの原点であり、私が私の力を発揮出来る手段。

歌うときは誰よりも強くあれるって気がする。

怖いものはないって思えるんだ。


その歌を武器に、生きていくの?

言い方を変えると、歌で食べていくってこと?

私にできるかな。


でも、あの人たちは認めてくれた。

家族と呼べる人。仲間と呼びる彼ら。

みんなが私の歌を聴いて、感動してくれた。

心を開いてくれた。


もしも私に才能があるのなら、やってみたい。

どれだけの人の心を動かせるか。

自分のためにじゃなくて、私の歌を聴いてくれる人々のために。

私を求める人のために。

この力を授けてくれた──お母さんのためにも。

ならば答えは簡単だ。



「歌いたい。自分を信じてみたいです」



この輝く世界で、私らしくいたい。

漠然とした夢を追いかけるんじゃなくて、目標として常に傍に置いておきたい。

そうすれば必ず、諦めることなんてしないから。