「ねえ、ユーリちゃんと別れる予定ないの?」


圧倒されてると、レオンが火に油を注ぐようなことを平然と言った。

……なんてことを!


「あ?ふざけてんのか」


憤然として睦斗は、怒気と殺意を背負いレオンに噛みつこうとする。


「止めろ睦斗!絶対殴っちゃいけねえって!」

「モデルはアウトだろ、落ち着けー!」

「睦斗ストップー!」


それ見たことかと幹部総出で憤激した総長を捕獲。


「んー、別れそうにないね君たち。残念だ」

「当たり前だ。寝言は寝て言え」


レオンがつまらなそうに唇を尖らせると、睦斗が瞬時に応答。

睦斗は我慢強いから手を出したりはしないだろうけど、不安が先を立つ。


「でも、この子は俺たちがもらうから」


だって、レオンがまた変なこと言うから!

睦斗のイケメンフェイスがどんどん崩れていくではないか!


「ユーリちゃんは歌手になるんだよ。俺が見込んでスカウトしたんだから、絶対」

「歌手……?」

「何年先になろうとも、俺は諦めない。この子を絶対俺たちのものにする」


……私、いつそんなこと言いました?

歌手?根っから思ってませんで。

けれどレオンのその眼には、畏怖を覚えるくらい艶やかな光があった。

口だけで言ってるんじゃないんだと、肌で感じた。


「まあ、君には関係ないけど?ユーリちゃんの耳に入れてほしかっただけ」


長居はしないのか、レオンは背を向けた。

お洒落な私服に見合うスタイル。

風に吹かれるオレンジ色の髪は、獅子そのもの。


「それじゃあね、歌姫。また会おう」


……なんでこんな人が、私を求めるんだろう。

私の魅力って、何なんだろう。

結局それは分からず終いだった。