リトルソング-最強総長は歌姫を独占したい-

そして迎えた文化祭フィナーレ、私は緊張のあまりプルプルと震えていた。


「緊張せんで大丈夫、優凛なら絶対成功する!」


龍生はそうやって励ましてくれたのを最後に、テントの中から出ていった。

ここは中庭舞台横に設置された有志出演者待合室。

周りから隔絶されたこの空間で、私は出番を待っていた。


「盛り上がってるか~!?」


司会進行の龍生の声が聞こえ、私は覚悟を決めた。


「盛り上がり大いに結構!
それでは、ここでスペシャルゲストの紹介や!」


どうやら、ステージの周りからは歓声のようなざわめきが上がっているみたい。

ここで私が登場したら──空気壊れないかしら?

特に女の子からの視線が怖い。

妨害とかされたらどうしよう。


「人は彼女ををこう呼ぶ。“万人を魅了する歌姫”。
今年の文化祭の本当のフィナーレは、ここからや!」


うわっ、そんな大したものじゃないって

過大評価し過ぎだって、龍生。嬉しいけども!


「さあ、拍手で迎えるんやで?歌姫、安西優凛の登場や!」


え、このタイミングで呼ばれた?

あわててテントから飛び出さ、真っ白のテントから色鮮やかな外界へ。

シンする空気。眩むような日射し。

それからどこもかしこも人・人・人。


緊張を感じる間もなく、大音量の音楽が流れ出す。

これは──私が歌う曲の前奏だ。

龍生にさりげなくマイクをもらい、私は迷うことなく口元まで上げた。


……自己紹介は要らないよね?

大切なのは歌声。それだけ聞いてくれれば満足だ。


息を吸い込み、目を瞑って音に身を任せる。

その先は全て私のもの。

この空間だけは、この瞬間だけは、私に全てを委ねてください。

絶対に心を動かして見せるから。