でも……ごめんね、那智。

一生懸命、自分の気持ちを押し殺して言ってくれたのに、涙のひとつも流せなくてごめん。

なんで涙が出ないのか自分でも分からないんだ。

遠い昔にその感情を置いてきた気がするの。


「……良かった」

「……?」

「俺が最初に好きになった女が……お前で良かった」



那智の切ない告白を聞いてもいながらも、この時の私は、涙を流せなかったんだ。

だから、笑顔で許して。

それが今の私にとって最大級の償いだから。


「ありがとう、優凛」


笑う私を見て、那智も優しく微笑んだ。

この気持ちはなんだろう。

切なくて、それでも温かくて。

上手く頭でまとめられないけど、これだけは言える。



那智。私を好きになってくれて───ありがとう。