「暑いね……」

「……ああ」

「夏休み、終わっちゃうよ」

「そうだな」


会話にならないくらいの素っ気ない応答。

でも、久しぶりに那智と話せて嬉しかった。

那智が変わらず優しいままで、嬉しかったんだ。「ねえ那智」

「ん?」

「話してほしい人がいるの」


そろそろだと見計らって、那智に向かって微笑んだ。

そこで、音を捉える。

幻聴じゃなくてはっきりと。

陽炎の向こうに、ゆらめく影が見える。

それは偶然じゃなくて故意に。


「……お前!」


近づいてきた音は、バイクの音。

揺らめいていた陽炎は、彼の姿。


「そうだよ。那智には……」


睦斗と話してほしいんだ。