「良かった、今日ここに信司(シンジ)連れてきて。やっとメサイアとご対面できたよ」


身長は190㎝近く。

顔はサングラスをしてるからよく分からない。

けど、この人を知ってる気がするのはなぜだ?

この鼻筋の通った外人っぽい男性、どこで見かけたんだろう。


「信司、この子だよ。話してた救世主(メサイア)


すると彼は後方の人ごみに声を通した。


「あっ、お前!勝手に話しかけるなって言ったのに!」


その中から、1人の男性が肩で息をつきながら走って来た。

真夏なのにスーツを着てとても暑そうだ。


「突然申し訳ございません。私たちはこう言うものでして……」


と、彼は無駄のない動きで何かを差し出す。

両手で丁寧に渡された、名刺だった。

……え、名刺?

なんで私がもらうんだ?“清水(しみず)プロダクション
黒川信司(くろかわしんじ)


受け取った名刺にはそう書かれてあった。


「……清水プロダクション?何だこれ」


隣で様子をうかがってたお父さんも、怪訝な顔して名刺を覗き込んだ。

それを見た黒川さんというスーツの男性は、お父さんと視線を交え、早口に滑舌よく自己紹介した。


「あ、お父様でいらっしゃいますか?初めまして。芸能事務所、清水プロダクションの黒川と申します」

「黒川さん、ね……」


同じように名刺をもらったお父さんは、眉をひそめて彼を見た。

うん、胡散臭いって思ってる顔だね。