「……優凛」

「ねえ、どうしたの?」


息を整えながら、優凛は瞳を俺に向ける。

いつも通りの澄んだ瞳。

こんなことしてんのに、怯えも嫌悪もない、変わらない瞳。

愛しくて、切なくて、こみ上げて来た想いと共に優凛を抱きしめ、腹の内を吐いた。


「今日……那智が、俺のとこに来た」

「え?」

「……まだ、元に戻れそうにねえんだ」

俺は何がしたい。

優凛に言ったって心配かけるばかりなのに。


「なあ、優凛。どうしたらいい?」


俺が優凛を守らなくちゃいけねえのに、不安にさせてどうすんだ。


「お前が一番大切なんだよ」


ああ、そうだ。お前がこの世界で一番。


「お前以上に大事なものはない」


けど、那智だって大事な親友だ。

他に変わりなんていない、唯一の存在。

だから悩んでる。

どっちも器用に大切にすることなんて不可能だ。

かと言ってどちらかを捨てることなんて、絶対にしたくねえ。


「俺は……どうしたらいい?」