リトルソング-最強総長は歌姫を独占したい-

「待ってね、今タオル取ってくるから!」


俺としたことが、あの満面の笑みを前に断り切れなかった。

誘導されるがままに安西家に足を踏み入れた俺は、リビングの中央に立ち尽くしている。

……何やってんだ俺。

まあいい。すぐに帰ればいいだけの話だ。


「ん……?」


俺のいる位置から真正面に、畳の間があった。

微かに香るこの匂いは──線香のもの。

不思議に思い、無礼だとは知りつつもそっと覗いた。


「……夢」


そこに仏壇があった。

中央の遺影には、やわらかく微笑む女の顔。

優凛の母である、夢が静かに笑っていた。


「睦斗、はいタオル!」


背後からの声に振り返ると、俺に向かって投げられる白い物体。


「ナイスキャッチ!」


片手に掴んだら、優凛は親指を突き立てた。


「いやー、やまないねえ」

「……親父さんとか、弟いねえの?」

「ん?お父さんと達綺?いないね、しばらく帰ってこない」

「は?」

「お父さんはお盆になるまで帰って来なくて、達綺は合宿中なんだ。だから今は、おうちに独りなのさ」


……誰もいねえのか。

って喜んでる場合じゃねえ。

だから何考えてんだ俺は。