リトルソング-最強総長は歌姫を独占したい-

「っ……!」


結局、その後に続くのは沈黙。

俺は直前で拳を止め、那智を解放した。

殴ってしまえば解決しないと思った。

同時に、投げやりな体勢の那智に一種の恐怖を覚えた。


「……殴れよ」

「……」

「いいから殴れよ。なんで止めた?」


平然と、那智が視線を送る。

まったく感情の読めない真っ黒な瞳で。


「できるわけねえだろ……」

「……」

「なんでお前なんだよ」



これが、お前じゃなかったら殴れるんだ。

思いきり、優凛は俺のものだと言い張れるんだよ。

でも、お前はダメだ。

お前は俺にとってかけがえのないものだから。

こんな形で終わらせるほど、薄い関係ではないと信じているからだ。


「殴りもしねえのか……。つくづくお人よしだな、睦斗。
甘いんだよお前は。そんなだと、守るものも守れなくなるぞ」

「那智、俺は……」

「さっさと切り捨てろよ。俺1人くらい、どうってことないだろ」

「……!」

「なあ、そうだろ?要らねえ存在は捨てていけよ。いつまでも慈悲をかけてんじゃねえ」


なんでそんなこと言うんだよ。

俺はお前のこと、そんな風に思ってねえ。

俺は、ずっとお前のこと──


「……できねえ」


ずっと、親友だと思ってるから。

できるはずがねえんだよ、那智。