side 睦斗


無言で那智の家を後にし、暑い日差しを感じながら来た道を戻る。

その間、何も喋ることはなかったが俺はずっと優凛の手を握っていた。

お互いが不安に押しつぶされないよう、手を繋いでいた。

時折、優凛が小さく手を握り返す仕草を見ては、こみ上げる想い。

愛おしくて──優凛が好きだと強く実感した。

だからこそ那智に優凛は譲れない、絶対に。


「……家まで送る」


駐車していた単車のところまで戻り、ようやく2人の間にあった沈黙を破った。


「え……いいの?」

「ああ、俺が連れ回したわけだし」


そう言うと、優凛は考えるように視線を泳がし、少し悪い顔をした。


「……ホントね。この炎天下の中で、ね」

「……は?」

「お肌の大敵、死ぬほど浴びたわ」


優凛はいつもそうだ。

どんな時でも、その言動は予測不能。

底抜けの明るさを持ってる。

ただ俺にはそれが、自分をつくろう為の演技のようにも見える。

辛い出来事に直面すればするほど、わざと明るく振る舞うかのように感じる。