「優凛、今日ヒマか?」

「……ヒマだからここにいるんですが?」


8月上旬のある日。

私は雷神のアジトにお邪魔してた。

達綺は部活、お父さんは仕事。

家は私以外誰もいないし、電気代がもったいないので避暑する目的で訪れたのだけど。


「じゃあ天気いいし外行くぞ」

「外?…ん溶けちゃうぜ」


睦斗が私を連れだそうと計画しているらしい。

しかも日中で一番暑い時間帯に。


「……嫌か?」

「嫌です」

「……」


しっかり相手の目を見て否定したはずなのに、睦斗は無言で私の腕を掴み、出入り口の方へと足を進めた。

私は抵抗しているつもりなんだけど、力の強い睦斗に引きずられる形で部屋を引っ張り出された。


「睦斗くん?今の言葉ちゃんと聞いてた?」

「だからなんだ。俺が行きたいと言えばお前も行くんだよ」


どうした睦斗。急に俺様になっちゃってさ。

さては、暑さに頭をやられたな!


「いいから、ついて来てくれ」

「む……?」

「優凛じゃねえと、連れていけねえ」

「う……!」


しかしぎゅっと抱きしめたくなるような表情が性癖に刺さった。

俗に言う“子犬の目”。

その顔には弱いんだよ。

守りたいと思っちゃう、切ない顔は。