「……どうした?」

「……」


──グー…


その時、空腹に耐えきれずお腹が鳴いた。

今はそれどころじゃないのに……。


「ふはっ……優凛、腹が減って動けねえの?」


そうだけど、そうじゃない。

うつむいてなに拳を握りしめていると、腕を思い切り引っ張られた。


「わっ……」


陸斗が軽々と立ち上がらせてくれたみたい。


「ほら、みんなが待ってるから行くぞ。道なら俺が分かるから」

「……」

「……優凛?」

「あ……なに?」


どうしてもいつも通りの私に戻れなくて、曖昧に返事すると不意に抱きしめられた。

じんわりと伝わる、睦斗のぬくもり。

それから、唇に一瞬触れた優しい感覚。

抱き寄せられ、キスをされた。


「どうした、優凛。何かあったろ」

「大丈夫、何もないよ?ただ暗くなって怖かっただけ」

「そうか、ならいい」


そうか、という睦斗はいつも通りだ。

暗くてよかった。表情がはっきりと見えていたら睦斗に異変が気づかれていたことだろう。