「ふうー……災難だぜまったく」
走って走って、火照った体が夜風に冷やされる頃。
自分の起こした重大な事件に気がついた。
物音にビビって逃げたせいで、現在位置が分からなくなった。
……まったく、自分のぶっ飛びようにある意味尊敬するよ。
「誰かに連絡しようかな……」
そう思った時、お腹の虫が泣き始めた。
「だいたい、ご飯の前にナイトウォークなんてしちゃあかんよ…」
お腹が空いた状態だと、集中力が途切れる。
つまり宝探しに集中できない。
それに、なんだかとてつもなく寂しい。
ここの土地が広いから余計そう思うんだ。
本当に独りぽっちになったみたいで怖いんだ。「っ、まぶしい!」
その時、眩さに視界を奪われた。
「ちょっと……誰だ!てか、ライトこっちに向けないで!」
「……悪い」
スマホの懐中電灯アプリを起動しているらしい声の主は、一言謝るとその灯りを消した。
ってこの声……那智かな。
「何してんだ、お前」
「……」
「…なんか見つけた?」
「……」
「まさか……迷子か」
──ぐう~
おいおい、お腹の虫さんよ。
返事するのは君じゃなくていいんだぞ?
「……おまけに腹も減ってんのか。忙しい奴だな」
…ダメだ。
お腹が空きすぎて立ってるのも辛い。
私はへたりこみ、口だけは達者に那智に言葉を飛ばした。
「そうですよ。何にも見つけられずに迷子になってお腹の虫が鳴き始めたんです!」
「……散々だな」
くう、情けないぜ。
那智にかっこ悪い所を見せちまった。
うなり続けるお腹をさすってると、那智が足音を近づけてきた。
そしてごく自然に、私の横に腰を下ろし、星がちらつく空を眺めだした。
「……あの、那智さん?」
「あ?」
「何してらっしゃるんですか?」
「……知るか」
目が点になって、ずっと那智の横顔を見つめてた。
なんでだろう。
那智となら、沈黙が怖くないんだ。



