灼熱地獄の学校もやっと終業式を終え、迎えた今日良きこの日。


「夏休みだぁぁ!」


10人乗りのキャンピングカーから降りて、歓声を上げた。


「なんて広大な大自然!!?」


見渡す限り緑が連なる山々。耳を澄ませばせせらぎが聞こえる。

私たちは今、この大自然のど真ん中にいるのだ!


「やっと着いたかー」

「てか、テンション上がりすぎだろ優凛」

「たかが山にな」


続々と車から降りてくる雷神たち。


「まあまあ、優凛が楽しそうでなによりじゃねえか」


それから、運転席から降りてきた長身のイケメン。


「龍さん、運転お疲れさんっす!」

「別に疲れてねえよ、1時間も走ってねえから大丈夫」


そうなのだ。龍ちゃんがわざわざ運転手となり、ここまで送り届けてくれた。

龍ちゃんにはホント、お世話になってばかりだなー。


「ようこそお越しくださいました」

「ん……?」


「ありがとう龍ちゃん」なんて話しかけながら歩いていると、柔らかな女性の声がした。

なんだとそっちの方を見て言葉を失った。

だってそこには。


「お越し頂いて、誠にありがとうございます。
長旅でお疲れでしょう、どうぞこちらへ」


女将らしき、おしとやかな物腰の美人。


「いらっしゃいませ!」


その後ろからは、10人ほどの着物の女の人が、幾重にも重なって聞こえる、いらっしゃいませに合わせて腰を曲げる。

更にそのバックには。


「ご、ゴージャス……」


壮大で美しい、純和風の建造物が、どんと威厳を放っていた。

辺りの大自然に負けないその姿に、息を飲むしかなかった。

ここが颯先輩の縁ある場所なの!?

もしかして颯先輩って、御曹司だったりする!?