「お邪魔しまーす…」


小声で呟いて足を踏み込む。

向かった先は屋上。

梅雨の終わりに差し掛かった今日の空は、どんより雲が広がってる。


「……いた」


広い屋上を見渡すと、右端でフェンスにもたれかかってる人を見かけた。

学校に来ないかもと心配したけど、杞憂だったようだ。


「那智……?」


近づきながら名前を呼ぶも、返事がない。

また寝てるのかな?


「……ん」

「お、起きた」


すると気配に気づいたのか、那智を眠たそうにまぶたを上げた。


「あの、おはようございます」

「……」

「今日は早いんだね。雷神まだ誰も来てないのに」


寝起きでも迫力ある凄味に、胸中ではビビってても、この人に訊かなくちゃいけないことがある。


「……てめえ、何しに来た」

「那智と話したくて」


厄介そうに口を開く那智に、間髪入れず言い切った。


「昨日はごめんなさい。盗み聞きしてたくせに急にあんなことして」


でも、話をする前に昨日の出来事を謝らなきゃ。