「それで、2人は何してた?」


両者が大人しくなると、颯先輩が機を逃さず、私と睦斗に向けて問いかけた。


「分からない。ただ、優凛が──」

「あ、なんでもないです~!」


睦斗が口を開きかけたところで、あっけらかんと言いのけた。

睦斗と目も合わせず彼の前に立つ。


「お散歩してたら貧血かな~?
クラクラーってなっちゃって。そこを通りかかった睦斗が助けてくれたって感じ?」

「そうなのか?それにしては野次馬がいたが」


勢いに任せてぺらぺら喋ってると、颯先輩はいかがわしい表情で睦斗に問う。


「え、そんなに人が集まってました?分かんなかったな~。
それにしても睦斗がいなかったら危うくぶっ倒れるとこだった。ありがと!」


その質問にすら睦斗に答えさせずに、私は再び嘘つきになった。

こうでもしないと、私は私を保てない。

今起きたことを、那智のことを語れば、おそらくまた目の前が眩む。

踏み入れちゃいけないところに入り込んでしまう。


「うーんと……それじゃ、私はこれで!」


これ以上つく嘘を考えるのは億劫なので、適当なところで離れようとした。


「優凛!」


早足に歩み始めたところで、睦斗が腕を掴んだ。

その手には力が入ってて、痛かった。

痛みと共に不安も伝わってきて、なんだか怖くなった。


「……睦斗、休ませてもらっていい?」


だから、自ら睦斗から背中を向けた。


「お前……」

「生理前だから、気分が悪くって~。
あと胸が張ってしょうがないから保健室でブラ外して休んでくるわ」

「……!?」