「……冗談やろ?」


目を見開いたまま、龍生は口だけ動かした。

え、そんな怖い顔しなくてもいいじゃん。


「ん?真面目に。雷神ってなんですか?」

「あ……」

「あ……?」

「ありえへん!ホンマありえへん!」


すると龍生は私の肩を掴んで叫んだ。


「安西さんそれはないで!今時この辺の子が雷神知らんとか……あんたどんだけニブイん!?」

「に、鈍い……!?いや、だって興味ないもん」

「ウソやろォ……」


肩から手を離して深くため息をつく龍生は表情を変えた。


「……しゃあない、俺がイチから教えたるわ」

「え?別にいい」

「ええか安西さん!これは知らんとホンマに損するで」


ああ、この人話聞いてない。


「……優凛でいいよ」

「おおそうか。そいじゃあ優凛!
例えばどっかのチンピラがナンパでもして来たとするやん?」

「……うん」

「そん時に、“雷神に知り合いがいるから”って言うだけで、そいつらはビビって金輪際ナンパなんてして来えへんから」

「はあ」

「せやから絶対知っとった方がええ!」


……ナンパされたとしても私の場合、プロ級のキックボクシングの技でKOさせちゃうから問題ないんだけど。

まあいっか。