「……歌えるか?」


睦斗が私の手を解き、最後に問う。


「うん、歌うよ」


私は素直にうなずいた。

肩にかけていたギターケースを下ろして、横にしてから開いた。

中には赤いエレキギター。

今日はお母さんのアコースティックギターじゃないけど、これも思い出深い物。

初めて買ってもらったギターなんだ。


「ふうー……」


一息吐いて、ギターを構えた。

梅雨の合間の晴れの日。今日はとても蒸し暑い。

じゃあ今日は、心の晴れる歌を歌おう。

私の精一杯の気持ちを贈ろう。

ギターを弾き出せばもう怖いものはない。

この時が、この瞬間が私の輝く時。


最初の世界は、ラブストーリー。

誰もが知ってる愛の歌。

私は歌うに連れて目を閉じて、歌声を渡らせた。