「お前の歌声なら通用する。心置きなく歌え」


睦斗がキリリとした面持ちで論ずるも。


「……歌えるか!」


いきなり路上ライブやれなんて、否定するのが普通でしょ!?


「じゃあ何のために来たんだよ」

「そんなの……理解不能です」

「……どこの誰だろうな。雷神のアジトに潜入した曲者は…」

「だってそれは……」


力なく反論を繰り返していると、手元に温かさが触れる。

睦斗が私の手を優しく包みこんでいた。

不可解な行動にキョトンとしていると、睦斗が瞳を向け───


「……歌って?」

「ッ……!」


不意打ちで睦斗が笑いかけてきた。

裏表のない、純粋な笑顔が零れる。


「お前の声が、優凛の歌が聴きたい。俺に聞かせて?」


やわらかく紡がれる言葉にゾクゾクした。

日差しも視線も感じなくなって、睦斗の姿しか見えなくなった。


「大丈夫、お前ならみんなが認めてくれる」


強い気持ちのこもった声を、誰が馬鹿にできる?

睦斗の真摯な眼差しを背けることなんてできない。

ならば、あなたの思うままに、私の心のままに歌おう。