「あー!マジで会いたかった。優凛に会うのが楽しみ過ぎて吐くかと思った!」

「私も嬉しすぎて鼻血出るかと思ったー!」


2人とも大興奮で、飛び上がったりぐるぐる回ったりして喜びまくった。

はしゃいで騒いで叫んで、狂喜乱舞している最中。


「……表現が汚ねえよ」



冷静沈着な低い声がこっちに向けられた。

トゲのある声に振り返ると、色素の薄い茶色の髪、中2とは到底思えないすらっとした高身長。


「達綺ちゃん!お父さん帰って来たよ!!」


マイブラザーの達綺がダルそうに突っ立っていた。


「見たら分かるし、騒いでたら一目瞭然。
……おかえり、父さん」

「ただいま達綺!」


達綺の声に、腕を広げるお父さん。

熱い抱擁を望んでいるようだけど、達綺は無言で部屋に引き返して行った。

むむ、クールぶりやがって!


「感動の再会はなし、か。クールだな達綺は〜」


気にすることなくワハハと笑うお父さんは、私から離れて靴を脱いで玄関に上がった。


「さてと、夢にただいま言わなきゃなー」


そして久しぶりに、お父さんは我が家へ足を踏み入れた。

玄関を上がって、真っ先に向かうは、お母さんが笑っている場所。

仏壇の前に、静かに正座した。


「夢……ただいま」


線香を上げ、手を合わせた後にお父さんは目を細めて遺影を眺めた。

その顔は、私達に向けられることがない──最も愛しい人にしか見せない表情。

お父さんは、今でもお母さんが大好きなんだね。

そんなお父さんを、私も大好き。