「じゃあ、無理しない方がいいな」

「え……?」


脳内を駆け巡った様々な事を整理してたら、睦斗の声が少し小さくなってることに気づいた。

眉尻を下げて揺れる瞳で見つめる睦斗がいた。


「疲れてんなら、今日は歌うのやめておくか?」


歌うのをやめる?……それは嫌だ。

疲れていても、歌は歌える。

歌は私の力の源なんだから。


「……歌うよ」


だから、彼の目をまっすぐ見て笑った。


「だってそのために、今日はギター持ってきたんだもん」


くるっと振り返り、年季の入ったギターケースを見せびらかす。

中にはお母さんの形見のギターが入ってる。


「だから歌うよ」


目を細めて見せれば、睦斗は驚いたような顔をして──


「……お前らしいな」


一番優しい笑みで、私を“認めて”くれた。

私らしいか。うん、いいね。



お母さん、見つけたよ。

私が歌う理由。

私に大切なものを教えてくれたみんなと、睦斗のために私は歌う。

それは私の存在意義でもある。

支えてくれた人すべてに、感謝の気持ちを述べても足りないから、歌を紡ごう。